カラスミは、ボラの卵巣を原料とする日本三大珍味のひとつです。
材料はとてもシンプルですが、血抜き・塩漬け・塩抜き・乾燥と熟成と、それぞれの工程に職人の経験が必要で、家庭料理とは一線を画す保存食でもあります。
専門的な道具や特別な材料よりも、手間・時間・見極めが味を左右するのがカラスミ作りです。

まず行うのが、卵巣に残った血を抜く工程です。
血管に小さな穴をあけ、時間をかけて丁寧に血抜きを行います。この工程を疎かにすると、仕上がりにえぐみが残ってしまいます。

水につけて完全に血抜きをします。綺麗に血抜きできると、血管の筋がなくなっているのが分かります。

血抜きが終わった卵巣を塩に漬け込みます。
この塩漬けによって、卵は一度完全に水分が抜けた状態になります。ここが、カラスミ作りの大きな節目です。

塩漬け後、水に浸して塩抜きを行います。
すると、一度カチカチに乾いた卵が、再びブヨブヨとした柔らかさに戻ります。
塩を抜きすぎても、残りすぎても良くないため、この見極めには経験が必要です。

塩抜き後は、天日で干し、酒や焼酎に浸け、また干す——。
この工程を何度も繰り返しながら、少しずつ水分を抜き、旨味を凝縮させていきます。

仕込みの初期段階では白っぽかった卵が、干しを重ねるごとに美しい飴色へと変わっていきます。
水分が抜けることで、元の大きさより一回りほど小さくなり、味が引き締まります。

カラスミが完成するまでにかかる期間は、およそ1ヶ月。
毎日状態を確認し、干し具合を調整しながら仕上げていきます。
そのため、一本で1万円を超える価格が付くこともありますが、それは時間と手間が詰まった結果でもあります。
完成したカラスミは、薄く切ってそのまま味わうほか、大根や餅と合わせていただくのもおすすめです。
素材そのものの旨味を楽しめるカラスミは、おせち料理の中では味のアクセントとなる大切な一品として添えられます。
ここまでご紹介した製法は、滋賀県甲賀市の老舗料理店「お膳処つる家」で、おせち料理のために実際に行っている仕込みです。
つる家では、
という考えのもと、おせち料理を仕上げています。
年末の厨房では、一品一品、静かに、丁寧に仕込みが進められます。
派手さよりも、「新しい年を穏やかに迎えていただくための料理」。
そんな想いを込めて、おせちをお作りしています。




カラスミ作りは、特別な材料よりも、時間と手間、そして見極めが味を決めます。
その積み重ねが、おせち料理の一品として、静かに存在感を放つ味わいにつながっています。